'Tis a Long Way to Connaught

Connaughtは遠い

ケルティッククリスマス2010二部続き

前のエントリの続き。

LAUがはけるとすぐにLunasa!俺がここ数年彼らのアルバムを聴き返した回数は一体何度になるのだろう。彼らに憧れてホイッスルとフルート、そしてパイプスを始めたといっても過言ではない。その彼らが目の前で演奏するというのだから俺の熱の入れようも推して知れよう。

LAUと同様に先にセットリストを。これはある程度正確です。ただしどれかのセットのうち構成曲が変わっていて気づかなかった可能性はあります。

  1. Ryestraw
  2. Snowball
  3. Absent Friends
  4. Morning Nightcap
  5. Pontevedra To Carcarosa
  6. Spoil the Dance
  7. Cillian Vallely's
  8. The Last Pint
  9. Dr. Gilbert / The Merry Sisters of Fate

俺はてっきり最新アルバムLa Nuaからたくさんやるのだと思い込んでいて、普段聴かないが今回聴きに来た先輩にも「それ予習してけば大丈夫」という態度だったのだが、すっかり外したw 最初の2曲こそ最新アルバムからだったが。

まず特筆しなきゃないのは、Crawfordの面白すぎるMC。LAUはどちらかというと淡々と曲を回した印象だったけど、Lunasaは一曲一曲丁寧に解説とジョークを交えながら進めてた。Crawfordが中心になって話を回すのだけど、いちいちお客の喜びそうなことを言って会場を沸かせながら、ちゃっかりCDの宣伝なんかもして、まあ話がうまい。人柄のにじむステージはMCからってことか。

さてRyestraw。ギターのイントロからフィドルとパイプスが鳴り始めたときに、頭をがつんとやられたね。これがCillianのパイプスか、と。落ち着いていて滑らかなマーチは本当に彼に、特に最近の彼に、向いている。ああいう音を出してみたい、と思わずにはいられない。続くリールはCrawfordのホイッスル。あれは・・・Burkeのアルミだね(どうでもいいw)。相変わらずのくるくる回る指には感嘆せずにはいられないが、ときどき入れる変奏とか装飾とかがマジお茶目。MCで分かる彼の人柄そのものと言ってもいいその音にすっかりやられちまった。Lunasaに関しては、俺はCDの完成度に惚れ込んでいたのだけど、彼らのライブはそれとは全然違う楽しみができるのね。

Snowballはまたパイプスからのジグセット。最初の伝統的な一曲が、かなりよかった。曲名は忘れたけど。彼らのルーツたるセッションあるいはソロを彷彿とさせる演奏だった。こういう優しいセットは最近のルナサらしい楽曲で、ライブでもそういう部分は失われてなかった。やはりメンバーが安定して、円熟度が増したということだろうか。

お次はアルバムSeから、Absent Friends。なんでもいいけど、とかく茶目っ気あふれるCrawfordのフルートはすげえ。よくあんなことできるなあ。手足のように道具を使う、を地で行くフルート回し。この曲は地味にベースのHutchinsonが大活躍してた。CD音源より低音が響くので、彼の偉大さが際立ってた。

そして次ですよ。まさかのMorning Nightcap。Crawfordも「俺達は昔の曲はもう余りやらないが、今回はretrospectiveなのを」と言ってやってくれたのだ。もうね、長年のファンとしては落涙ものですよ。今でこそギターはMeehanだけど、サードアルバムが出た頃を含め長年ギターはDonoghだった。Meehanを否定する気なんて皆無だし、むしろLa Nuaの安定感は彼とTreverががっちりハマったからだ、と思っているけれど、個人的に好きだったセカンド・サードアルバムはDonoghの存在のもとに生まれたのであって、その最後を締める名曲Morning Nightcapが、ここで聴けるとは全く思わなかったんだ。さっき落涙ものとか書いたけど、最初にCillianのドローンとレギュレーターが唸り始めたときには本当に泣いた。何かこれまでのアイルランド音楽へコミットしてきた年月が報われた気分になった。他のみんなも素晴らしかったし、何よりもMeehan含むあのメンバーでこの曲を演奏するということ自体、またひとつ彼らは歩を進めたのだなあと感慨深い。今回のハイライトの一つ。思い出しても泣ける。

次は・・・メモにはPontevedraとMuineiraと書いてあるのが、いまいち全体の記憶がはっきりしない。一曲目はおそらくPontevedra To Carcarosaだったと思う。その後は分からん。こういう3拍子系もいいよね!とごまかすw

続くSpoil the DanceはアルバムRedwoodから。Lunasaも色が変わり始めた時期のアルバムだが、スリーホイッスルは健在で、ライブでも非常に映えていた。Smithは最初から最後まで活躍しすぎ。中盤のギターがかっこいい事で有名な曲だが、ライブではますます動と静のコントラストがはっきりして、今回代表曲レベルが多いリール群の中でも全く劣らぬ素晴らしい曲だった。

Cillianのパイプソロが来るとは予想してなかった。曲名は聞き取れなかったが、美しいLamentだった。Crawfordが「特別な時間だ」といい、赤い照明で染まりながらメンバーたちがパイプスを引くCillianを見つめるステージは、静まり返った観客席と相まって荘厳な雰囲気を醸し出していた。Lamentとはこういうものなのだ、と皆悟ったのではないか。

続けざまにStolen Purse。じゃなかったかもしれない(笑)しかし2曲目は確実にAn Sioda Slideだった。これもね、良かったね。観客の拍手がなければね。An Sioda SlideのBパートのビートは特殊なんだよ!なのにAパートと同じように叩きやがって!せっかくのかっこ良さが台無しじゃねーか。まあそこに文句行っても仕方ない、むしろ他の曲で手拍子がなかっただけ良かったというべきだとは思っているのだけど。でもちょっとなー・・・残念。

次はThe Last Pint。これも実はファーストアルバムからだが、ライブ受けするということで長年彼らが演奏してきた曲。俺が大好きな曲なので非常に嬉しい。いやーいいね、スリーホイッスルは。生で聴くハーモニーは絶品でした。来年これやろうかな、自分のとこで。

そして最後になってしまいました。最後の曲は、かのDr. GilbertとThe Merry Sisters of FateとLongacre。このセットは彼らのアルバムには実は入ってなくて、録音はMusic in Irelandという本の付属CDにちらっと入っている。このDr. Gilbertはルナサの楽曲の中でも、最もとがった曲の一つでありながら、ルナサらしさを体現した曲でもある。最初のHutchinsonのベースがぎゅいんぎゅいん言うパート、なんだかんだとHutchinson超楽しそうだった。Smithのフィドルの切れ味も抜群。録音と同クオリティが出せるのが本当にすげえ。The Merry Sisters of Fateのときは観客の拍手(これは求められたものだし分かりやすいトラッドのグルーブだったからむしろよかった)に押されてものすごいパワーが会場に渦巻いてた。Crawfordのハーモニー半端ねえ。もっとこっち向いてCrawford!俺の席からじゃ君の横顔しか見えないよ!

こんな感じで大拍手。何と気持ちいい終わり方だったろうか。

拍手は鳴り止まない。そして・・・


Ancore: Lunasa & LAU
「ルナサとラウーのセッションとかありそうじゃね?」「あるあ・・・ねーよw」とか実は思っていたのだが。

アンコールに応えて登場したのは、なんとルナサのメンバーのみならずラウーのみんなまで!え、なにこれなにこれ!現実?夢の共演ってこういうこと!?驚きと興奮でひっくり返りそうになりながら、展開を眺めてると、最初はLAUの曲をやるっぽい。この曲も聴いたことがなかった(つまり曲名も分かりません)(追記:Freeborn Manだった。やはりファーストも聴かねばなるまい)のだけど、静かなDreverの歌声に少し冷静になって、落ち着いて曲に没頭できた。おお、LAUにフルートサウンド・・・新しい、でもイイ!ベースかっこよすぎでしょTreverさん!人の曲なのにずるいでしょそれw こういう組合わせが可能なのは、やはりコンテンポラリーに傾きつつあるLAUもしっかりトラッドに根を張ったバンドであるからだろう。いずれにせよ新境地が堪能できた。

お次はLunasaのFleur de Mandragore/Ash Plant。やっぱりアンコールもリールですね!Lunasaだけでも盛り上がることの確定した曲だというのに、3人増えたら一体どうなってしまうのか!?何といってもO'RourkeとSmithのダブルフィドルによるAsh Plant。ベースとアコーディオンで低音もがっちりかためられ、ツインギターで打ち出されるグルーブに乗って、メロディー楽器が全員でユニゾンする・・・まさに圧巻。この舞台は、もう二度と、少なくとも日本では実現しないであろう、という念にとらわれて、俺はただただそのグルーブに身を任せて手を叩いていた。最後のBパートをなんども繰り返すたびに会場のテンションはうなぎのぼりで、皆が一体になったところで、今年のケルティッククリスマスは幕を閉じた。


以上が俺の見たケルティッククリスマス2010です。そもそもあそこまで大きいホールでトラッドの演奏を聴くのもはじめてで、どんなもんかとも思っていたけど、本当にみな素晴らしい演奏だった。S席6000円?安すぎるだろう。今年は間違いなく当たり年だった。

向こう3ヶ月頑張る気力を頂いた。満足満足。